2011年1月10日月曜日

旧暦のムーチー

沖縄長谷寺です。沖縄では色々な伝統行事が旧暦で行っています。その一つがムーチー。旧暦の12月8日の行事です。新暦では1月11日火曜日です。ムーチーを漢字でかくと鬼餅と書きます。鬼を追い払うお餅の意味があります、モチコお餅の粉に砂糖とベニイモなどの粉を混ぜて水で耳たぶ位にこねて。これを月桃(げっとう)の葉っぱにくるんで、蒸し器で30分ほど蒸します。これで出来上がりです。写真はほぼ作業の順番どおりに並べてみたものです。月桃の葉は特有のおいしい薬草のような匂いがして、これがお餅の防腐剤にもなります。゜月桃は別名サンニンともいいます。写真を添えます。
月桃は長谷寺の境内にたくさんあります。沖縄戦の最中の昭和20年6月ころに丁度月桃の花が咲いていました。ですから戦争体験者にとっては、月桃の花の季節は戦争の記憶と重なり合います。こちらの反戦シンガーソングライターの海勢頭豊(うみせど ゆたか)さんの曲に「月桃」というのがあります。その一番の歌詞は「月桃ゆれて花咲けば 夏の便りは南風 緑はもえるうりずんの ふるさとの夏」2番は「月桃白い花のかんざし 村のはずれの石垣に 手に取る人も今はいない ふるさとの夏」3番は「摩文仁の丘の祈りの歌に 夏の真昼は青い空 誓いの言葉今もあらたな ふるさとの夏」4番は「海はまぶしい喜屋武の岬に 寄せくる波は変わらねど 変わる果てない浮き世の情け ふるさとの夏」5番は「6月23日待たずに月桃の花 散りました 長い長い煙だなびく ふるさとの夏」6番は「香れよ香れ月桃の花 永遠に咲く身の花心 変わらぬ命変わらぬ心 ふるさとの夏 ふるさとの夏」とあります。
この歌は1982年に作られた歌で、その後1996年に映画「がま 月桃の花」の主題歌となりました。月桃はショウガ科の多年草です。歌詞にある「うりずん」とはその頃の季節の呼び名で「潤染」と漢字で書きます。山も畑もそして家々も全てが沖縄の梅雨の雨によってぬれて染まることを表しています。そこで、潤う・うるおうという漢字と、染まるという漢字を当てていますが、この漢字は当て字だと思います。沖縄戦はそのうりずんの季節にあたりました。避難の毎日が梅雨のさなかにくり返され、その中で多くの人々が倒れ、また日本軍の犠牲になり、また日本軍の命令で集団自殺に追い込まれていきました。その生き証人がまだまだたくさん生存していて、証言活動を行っています。月桃はそんな記憶とも重なる植物です。
ムーチー・鬼餅の説明から、沖縄戦までについつい話が及んでしまいました。今後も機会があれば、話はあちこちと飛びますので、よろしくおつきあいください。住職 岡田弘隆 です。南無観世音菩薩 合掌